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医師が教える薄毛やAGAの治療・対策メディア

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【医師が教える】自ら髪の毛を抜く疾患「抜毛症(トリコチロマニア)」とは

薄毛治療

自分で髪の毛を抜いてしまう「抜毛症」。この疾患は「トリコチロマニア」や「抜毛癖」とも呼ばれ、なんらかの心理的要因が関係するといわれています。何故そのような症状が出てしまうのでしょうか。もし自分や自分の家族に抜毛症が発症した場合どのように対応し、どのような治療をすればよいのでしょうか。

今回のAGAタイムスは抜毛症の原因や治療法について解説します。

抜毛症(トリコチロマニア)とは?

抜毛症とは、体毛、特に頭髪を自らで強迫的に繰り返し抜いてしまう疾患です。主に小学生などの小児に多くみられるほか思春期の女児にも多くみられ、若年女性の発症率が高いものの、性別や年齢に関係なく発症することがあります。

抜毛症には抜毛の感覚を求めるタイプの「焦点化型」と、無意識に抜毛行動をとってしまう「自動化型」の2タイプがいるとされており、近年の研究では症状の重症度はこれらのタイプと関連するといわれています。また抜毛箇所は頭髪に限らず眉毛やまつ毛など、あらゆる部位の体毛を抜くケースも見受けられます。

場合によっては抜毛症と円形脱毛症の診断が困難な場合もありますが、抜毛症の場合には拡大鏡で見ると成長期毛(硬毛)の断裂が認められます。また円形脱毛症のように容易に引き抜くことができません。これらが円形脱毛症との違いです。

抜毛症の原因

抜毛症の発症メカニズムは解明されていませんが、小児の場合は主に家庭環境や学校生活など周囲の環境に精神的なストレスを感じることで発症することが多いと考えられています。中でも近年の研究では家族的要因が重要視されており、抜毛症を生じる小児は特に女児と母親との関係の歪み(両親の離婚や母親の過干渉、嫁姑問題など)が原因になることが多いことが知られています。母子家庭の男児でも、親や周囲の期待に応えられない場合に発症する例もあります。現在、精神疾患を分類するDSM-5では「強迫症および関連症(Obsessive-Compulsive and Related Disorder : OCRD)カテゴリーに含まれます。

抜毛症は国内でも現在までに多くの研究がなされており、ある報告では概観として大きく8つの特徴があると示されています。

①環境的圧迫
主として母親によって抑えつけられた結果、不満から精神的緊張が高まり、これを解消するため抜毛が行われる。
②自慰の代償行為
③無意識的な両性葛藤
例えば女児においては、女性になることの拒否、放棄、あるいは、男性化願望。
④母子関係の阻害から
愛情の対象である母親との情緒関係が阻害された結果、母親の象徴的代用物である頭髪に対して、特殊な関係が無意識的に成立する。
⑤性的不適応状態
頭髪には男性的強さという象徴的意味が付与されている。性衝動の過度な抑圧のために性的不適応状態におちいると、それを身体的に表現する抜毛が行われる。
⑥攻撃・否定・自己懲罰
母親からの情緒的拒否に対して敵意が生じ、この敵意によって、愛情の対象である母親を傷つけてしまうのではないかという不安が生じる。そして、そのような敵意を抱いた自己への懲罰として抜毛が行われる。
⑦両親との三角関係における敗北
情緒的な関係が失われてしまった母親と一体となろうとして、毛髪をなめ、飲み込む。また、サディスティックな両親の制御不能の怒りを鎮めるために、自罰的行動として毛を抜く。そして、女性であることを拒否することによって、父親を巡る母親との三角関係での敗北を宣言し、かつ、母親が男になった自分を、男としての父親を愛するより以上に愛してくれることを無意識的に願う。
⑧抜毛共生
母子ともに、分離や自立に対する不安があり、敵意と愛情という矛盾した感情をもっている。父親といえば、恐れられるか、無視されるだけであり、母子関係はいつもベタベタしている。

出典: 毛を抜く少年の内的世界について

抜毛症の治療法

これまでは抜毛症は心身症に伴う“患者自身の癖”だとされ、本人の意識の変化によって改善すると考えられてきました。しかし現在では心理療法行動療法に加え、向精神薬などを用いた薬物療法も抜毛症の治療に用いられています。

◆心理療法

抜毛症は言語化が困難な場合が多いため内面的世界の表現が可能となるような「箱庭療法」や「遊戯療法」「絵画療法」など、非言語的な心身療法が行われることがよくあります。実際に抜毛症患者が箱庭療法や遊戯療法などの心理療法を行い、抜毛症を改善させたという報告も存在します。

例えば箱庭療法は内側が青い箱に細かい砂を3分の1程度入れたものと多数の玩具(人、動物、樹木、花、乗り物など)を用いて箱の中に自由に自己表現させる方法で、何を用いてどう表現するかによって患者の心理状態を読み取ることを目的として行います。現時点では心理療法としての十分な治療成果は出ていないとされていますが、箱庭を作成すること自体にも治療的な効果があるとして心理療法の技法に取り入れられています。

◆行動療法

行動療法は、無意識的に行われている抜毛行為を伴う症例には、しっかりと「意識化」させ、抜毛が行われやすい“危機期に抜毛しないこと”を意識化させていく療法です。行動療法では抜毛の欲望にかられる「危機期」において自身で抜毛できない状況(大腿部で両手を抑える、両手で物を掴んでおくなど)を作り上げることで患者当人が抜毛したい気持ちを受けいれながらも抜毛しないように意識を変化させていきます。

この行動療法において重要なことは、抜毛したいという欲望から“気を逸らす”のではなく“受けいれる”ことであり、さらにその意識を継続させていくことだとされています。また抜毛症で生じた脱毛箇所に毛髪が生え、症状が改善されるまでには多少の時間を要するため、改善までに気持ちが途切れないよう、しっかりと治療に対する動機付けを行うことが肝心だと考えられています。その動機付けには、抜毛行為が行われなかった日にはカレンダーに印を付けるなどし、自己強化と他者強化を行う「トークン・エコノミー法」の導入が効果的であるといわれています。

◆薬物療法

抜毛症や慢性じんましん、円形脱毛症など、皮膚科に関わる疾患で心理的要因に該当する心身症に関しては、心身医学療法である精神科的薬物療法精神療法が行われることがあります。抜毛症は“本来は精神疾患であるが皮膚に症状が出る”とされる「一次性精神疾患」に分類され、抗精神病薬の適応とされています。

衝動行動であるとされる抜毛症には、まず主に「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」が使用され、効果が不十分である場合にはSSRIに抗てんかん薬を追加する治療を行います。それでも不十分な場合は抗てんかん薬を抗精神病薬に切り替えたり、抗てんかん薬と抗精神病薬を併用したりするなどして治療を進めていきます。

抜毛症を改善したい場合

抜毛症は小児に多いとされていますが、成人にも症状があらわれることがあります。無意識下で起こるケースもあるため、自身では気付かないうちに抜毛症を発症している可能性も十分あるでしょう。抜毛症の改善は心療内科での治療が有用とされています。症状が重症化すると治療が困難になってしまうことが考えられるため、抜毛症の症状があらわれたり、気付かないうちに脱毛斑が生じたりしている場合はまずは皮膚科で診察を受けることをお勧めします。

成人男性の抜け毛や薄毛は抜毛症だけに限りません。抜毛症や円形脱毛症など心療内科に関わる脱毛症もありますが、成人男性の抜け毛や薄毛で最も多い原因は「AGA(男性型脱毛症)」だといわれています。AGAは髪の毛が軟毛化して細く短くなったり、主に前頭部や頭頂部の髪の毛だけが薄くなっていくという特徴があります。またAGAは進行性であるため、一度発症すると何らかの治療を施さない限りは症状は進んでいきます。

AGAも抜毛症などと同様に、症状が重症化することで改善までに時間を要することが考えられるため、髪の毛の軟毛化や抜け毛の増加、前頭部や頭頂部の薄毛が気になる場合は一度AGA治療専門のクリニックで診察を受けることをお勧めします。

AGAヘアクリニック(以下、当院)は薄毛・AGA治療専門のクリニックです。AGAの疑いがある症状が出始めた場合だけでなく、将来の薄毛を予防したい場合など、さまざまな薄毛のお悩みに対応しております。当院では医師による診察や相談を無料で行っておりますので、少しでも薄毛に対する不安をお持ちの方はお気軽に当院へお越しください。

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