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医師が教える薄毛やAGAの治療・対策メディア

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【医師が教える】「AGAは母方の遺伝子が関係する」説のメカニズムとは

薄毛治療

AGA(男性型脱毛症)の発症には、遺伝と男性ホルモンの関与が明らかとなっています。それを知って「自分もいずれは父親のような薄毛になるのか」と怯えていたら「遺伝するのは母方の祖父の薄毛」と何かで読んで驚いたことはありませんか? だとすると、なぜ父方ではなく母方からなのか、その薄毛は100%遺伝するのか、本当に父親の薄毛は遺伝しないのかなど、新たな疑問が沸き起こっているかもしれません。そこで今回のAGAタイムスでは、現在明らかとなっているAGAの遺伝のメカニズムについて解説します。

AGAと遺伝の関係

AGAは男性ホルモンの「DHT(ジヒドロテストステロン)」が男性ホルモン受容体(アンドロゲンレセプター)と結合することによって発症します。DHTは男性ホルモンの一種「テストステロン」が体内の「5αリダクターゼ(5α還元酵素)」によって変化し生成されます。アンドロゲンレセプターと結合したDHTは、前頭部や頭頂部など髪の毛に対し、毛母細胞の分裂を抑制しヘアサイクルにおける成長期を極端に短縮させてしまい、薄毛が進行するのです。

そして男性ホルモン以外にAGAの発症要因の一つとして指摘されているのが遺伝です。遺伝的背景としてはX染色体に存在するアンドロゲンレセプター遺伝子の多型、常染色体の「17q21」や「20p11」に疾患関連遺伝子の存在がわかっています。

●遺伝的背景1. X染色体に存在するアンドロゲンレセプター遺伝子の多型

「遺伝子の多型」とは、人口の1%以上の頻度で存在する遺伝情報の違いのことを言います。この遺伝情報の違いが個々の体質の違いにつながっている可能性があるとされ、病気へのかかりやすさ(疾患感受性)、薬剤の効果、副作用の出やすさなどに関与していると考えられています。

これを踏まえて要約すると「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」では「性染色体であるX染色体上に存在するアンドロゲンレセプター遺伝子(AR遺伝子)の一部情報の違い」がAGAが遺伝する要因の一つであると指摘しています。実はこの“X染色体上”というのが大きなポイントです。

X染色体とは2種類ある性染色体のうちの一つです。性染色体とはヒトがもつ全46本(23対)の染色体のうち44本(22対)の「常染色体」を除いた2本(1対)のこと。女性は父親と母親から1本ずつ受け継いだX染色体が2本で1対に、男性は父親から受け継いだY染色体1本と母親から受け継いだX染色体1本が対になります。46本の染色体が全て「対」をなしているのは、父方と母方に由来するものがペアとなるからで、これらすべての染色体を構成しているのがDNA(一部に遺伝情報を保持した物質)です。

ここで注目すべきは、男性は必ず父親からY染色体を受け継ぎ、母親からX染色体を受け継ぐということです。母親が持つX染色体2本は以下の3つの可能性が考えられます。

  • 2本ともにAGAになりやすいARに関する遺伝情報をもつ
  • 2本ともAGAになりやすいARに関する遺伝情報をもたない
  • 1本だけにAGAになりやすいARに関する遺伝情報をもつ

1.の場合、子どもにもAGAになりやすいARに関する遺伝情報が受け継がれます。2.の場合、AGAになりやすいARの遺伝情報は存在しないため、子どもにもX染色体上のAGAになりやすいAR情報は存在しません。3.の場合は2分の1の確率ということになり、同じ両親から生まれた兄弟でもAGAになりやすいAR遺伝子を受け継ぐ者もいれば受け継がない者も出てくることになります。

したがって、仮に父親がAGAになりやすいAR遺伝子を有するX染色体を持っていたとしても、息子はそれを受け継がないため息子の“X染色体に存在するAR遺伝子の多型”に父親が直接関与することはないと言うことができます。一方で女性は必ず父親のX染色体を受け継ぐため、父親がAR遺伝子を有する場合はそのAR遺伝子が自分の子どもに受け継がれる可能性があります。

●遺伝的背景2. 常染色体の「17q21」や「20p11」に疾患関連遺伝子の存在

AGAは単一遺伝子疾患ではなく「常染色体」にもAGAに関係する遺伝子情報が存在するため「母方の祖父はフサフサだから安心」というわけにはいきません。「常染色体」とは、ヒトがもつ全46本の染色体のうち2本(1対)の性染色体を除いた44本(22対)のことで、子どもは男女とも22対の一方を父親から、もう一方を母親から受け継ぎます。常染色体である「17番染色体(長腕21)や20番染色体(短腕11)にAGAに関連する遺伝子が存在」することもAGAが遺伝する要因の一つであるため、父親からAGAの遺伝子情報が継承される可能性があるのです。

2008年には、ボン大学(ドイツ)のアクセル・ヒルマー博士の研究チームとロンドン大学キングス・カレッジ(イギリス)のティム・スペクター博士の研究チームが、20番染色体上に存在する複数の遺伝子多型がAGAの素因であることをそれぞれ独自に発表しています。後者の論文ではARに関する遺伝的背景と20番染色体のリスク多型両方をもつ男性の14%で、発症リスクが7倍以上高かったことも報告しています。

AGAを早期に発症する可能性

「現在薄毛ではないが、AGAに関する遺伝子を持っているのかが気になる」と不安な場合は「AGA遺伝子検査」を受けるという方法もあります。しかしAGAに関する遺伝子を持っている人は、持っていない人よりもAGA発症のリスクが高いとはいえ、それは「AGAを発症しやすい体質が遺伝する」ということを示すにすぎません。またAGAの発症には遺伝以外の要因も関わっているため、AGAを発症しやすい遺伝子を持っているからといって必ずしもAGAを発症するわけではありません。

●AGA発症に関与していると考えられる生活習慣

AGAに関する遺伝子を持っていても発症するとは限らないのは、食事や睡眠、運動など生活習慣の良し悪しのほか、生活環境の急激な変化や慢性的なストレス、お酒の飲み過ぎ、喫煙の有無などによっても影響を受ける可能性があるからです。AGAになりたくない、なるとしてもできるだけ遅らせたいと願うのであれば、薄毛治療を専門に行う医師に頭皮の状態や生活習慣の状況などを診断してもらい、なるべく早く生活習慣の見直しや適切なケアを始めることが重要です。

●生活習慣リスクのチェック

自分の生活習慣がどれくらいAGAの発症リスクを高めているのか、気になる場合は以下の項目をチェックしてみましょう。どれも髪の毛や頭皮に影響を与えかねないため、AGAの発症を遅らせるには一つでもチェックを減らせるよう改善が必要です。すでにAGAを発症していてAGA治療薬の服用を始めている場合でも、治療効果をあげるためにはこれらを改善することが大切です。

生活習慣チェックリスト
ファストフードや唐揚げなど、高カロリーで高脂質な食事をとることが多い
ダイエットで極端な食事制限をしている
運動不足である
タバコを吸う
ほぼ毎日大量の飲酒をする
睡眠不足である
仕事や人間関係でストレスを感じることが多い
頭皮に炎症やフケが生じやすい

●年代別に見るAGA発症率

1981年の調査によると、年齢別によるAGAの発症率は20代6%、30代12%、40代32%、50代44%、60代51%、70代61%でした。それから約20年後となる2004年の調査では、20代12%、30代20%、40代32%、50代40%、60代43%と、20〜30代の数字がやや増えているものの、全体平均の数字は前者が32%、後者が29%と大きな差はありませんでした。

出典: Takashima T et al. In: Orfanos CE et al, eds. Hair Research. Springer, Berlin Heidelberg New York 1981: 287-293

一人で悩む前に医師にご相談を

AGAの発症には遺伝や生活習慣など様々な要因が関わっていることがわかっていますが、AGAの病態の解明は完全になされておらず、これから新薬が出てくる可能性も十分に考えられます。しかし、今現在AGAの不安に直面している人は、現時点の医学的な根拠に基づいた予防法、治療法を行うことをおすすめします。

AGAヘアクリニック(以下、当院)は多くの治療実績に基づき、お一人おひとりに合った治療方法、治療薬をご提供する薄毛治療専門クリニックです。カウンセリングと診察は初診・再診にかかわらず何度でも無料ですので、どなたも気軽に薄毛にまつわるお悩みをご相談いただけます。薄毛にお悩みの場合はぜひ一度当院へお越しください。

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